Macchin Weblog

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戦争の体験記を読む

うちの檀家さんに80代にして現役のお医者さんがいらっしゃる。
子どもの頃からよくいろいろなことを教えてもらった。
なかでも,戦争では九死に一生を得られたようで,いつ聞いても
その言葉に重みがある。先日,お彼岸でお参りに行ったときに
一冊の本を貸してくださった。同じ戦線に参加していた人の従軍記だそうだ。
本の説明として,
「私もほぼ同じような体験をした。戦争の悲惨さ,むごたらしさがよくわかる。」
と説明してくださった。
なかなか忙しくて読めないでいたが,そのお医者様が寺にお越しになる
というのでお返しするために急いで読んだ。確かに日本から現地に行くの船の中から
衛生状態が悪く亡くなった兵士の話,統治につくと,意外にものんびりした
時間もあったということ,何も特別な人でなく,普通の若者の会話がなされていたこと
などから,余計にリアリティが感じられる。戦地に近づくと敵の機銃掃射に遭い,
必死で逃げる様子,混乱した様子も書かれていた。また,退却する際に
味方の兵士の死体を葬ることさえできないで移動していくときの心の痛み,
相手の戦車に味方の死体を踏みつけられるのをみても何もできない悔しさ
負けて捕虜になったときの差別的な扱いなど,日本軍がそういうことを
したというのはよく聞くが,日本の兵士もそういう目にあったということは
同じようには聞こえてこない。ここまで読んで改めて戦争というものの
恐ろしさ,非情さ,そしてまた当時の人たちにとってそれこそが日常であったこと
などがわかった。

そのお医者様はやはり軍医として前線に参加しており,負傷兵を背負って
退却しているところに敵の戦闘機と遭遇し,絶体絶命の場面で背負っていた兵士が
「軍医殿!私を置いて逃げてください!」
「馬鹿野郎!そんなことができるか!」
というやりとりの後,戦闘機のパイロットと目があったそうだ。
もうダメだ!と思った瞬間,戦闘機はそのままとび去っていったそうだ。
そこから,そのお医者様は「あのとき私がその兵士を置いて逃げていたならば,私はその場で撃ち殺されていただろう。でも,それをしなかったために相手も武士の情けをかけてくれたのだろう。」
と話し,私は生かされたのだと思ったという。だから,日本に帰って
人を救う仕事を一生の仕事にしようと思ったと話された。

80代になってなお眼光鋭い瞳の奥に,ほこりある生き方を感じた。
自分も全く及ばないながら,今の仕事でほこりある生き方をしたいと思う。
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